ポッドキャスト制作をAIで4時間から1時間に。ただし全自動にしない理由

槙 優真
槙 優真代表取締役 / 現役AI顧問ジェネラルコンサルティンググループ株式会社

※この記事は、ポッドキャスト『実利と余白』エピソード#20「ポッドキャスト制作を4時間から1時間に。ただし全自動にしない理由」の内容を記事化したものです。

【音声で聴く方はこちら(約20分)】

🎧 https://www.general-cg.com/podcast

(テキストで読む方は、このまま読み進めてください)

1. 要点のまとめ

  • AIなしでポッドキャスト1本を全部手で作ると4〜5時間。週次運用ではほぼ仕事にならない量
  • Claude Projectsで2時間、Claude Codeで1時間まで圧縮できた(約80%の時短)
  • 音声データを渡せば、コラム記事・メルマガ・SNS投稿まで、コマンドひとつで一気に整う
  • ただし、収録・ネタの仕込み・ビデオ化はあえてAIに渡さない。倍音・1次情報・余白を守るため
  • AI効率化の本質は"どこまで時短するか"より"どこを人間に残すか"のほう

※ポッドキャストでは、より詳しく丁寧にお話ししています。音声での視聴が1番オススメです。

2. 手動だと1本に4〜5時間かかる

このコラムの元になっているポッドキャスト『実利と余白』が、どうやって作られているか。今日はその裏側をお話しします。たぶん、想像されている作り方とはだいぶ違うはずです。

そもそもポッドキャスト1本を、AIなしで全部手で作るとどうなるか。

内訳のイメージで言うと、原稿を書き起こすのに1時間、収録した内容をもとにコラム記事用の文体に整え直して2〜3時間、メルマガ用にまた別の文体で書き直し、説明文を作り、SNS投稿も作る。トータルで4〜5時間は普通にかかります。

私は文章をかなり書いてきている方なので、書くスピード自体は早い部類だと思うんですが、それでもこの程度です。普段からマーケティング系の長文を書き慣れていない方であれば、丸1日仕事になる可能性も普通にあります。

週1本でも結構大変ですし、週2本にした瞬間「ちょっと正気の沙汰じゃないな」というバランスになります。実は私自身、ポッドキャストはずっと「やった方がいいんだろうな」と思いつつ、二の足を踏んでいた期間が長かったんです。AIがだいぶ進化してきたので、いよいよこれはできるぞ、ということでようやく始めた、という経緯があります。

3. 第1段階:Claude Projectsで2時間に

最初に使ったのが「Claude Projects」という機能です。ChatGPTでいう"マイGPT"、Geminiでいう"Gem"のClaude版です。

普段AIとやり取りをするとき、毎回ゼロから依頼するのって面倒くさいじゃないですか。聞きたいことを丁寧に伝えるほど良い答えが返ってくるのはわかっていても、ポッドキャストを毎回録るたびに同じことを書くのは続きません。

そこで裏側にプロンプトを仕込んでおきます。私の基本的な考え方、参考にしている書籍のエッセンス、最初の何本かで作った過去のポッドキャスト原稿、ポッドキャスト全体の戦略。こういったものをあらかじめClaude Projectsに覚えさせておくと、「ポッドキャスト撮るからよろしく」と話しかけるだけで、AIがいい感じにアシストしてくれる。ネタを伝えれば5分くらいの原稿がざっと返ってきて、それを見ながらアドリブで膨らませて20分弱で着地、という流れになりました。

これで4〜5時間が、収録込みで2時間くらいまで縮みました。

ただ、ひとつ問題が残っていて。原稿はうまく作れるんですが、そこから先──コラム記事用、メルマガ用、説明文、SNS用に文体を変換していくところで、毎回ツールを切り替えないといけない。それぞれ専用のProjectは作ってあるんですが、私が手動で「次はこれ、次はこれ」と切り替える。難しい作業ではないんだけど、他のことをやっていると面倒くさくなってきて、"SNS投稿は今回パスでいいか"になったりする。しかもこの調整はパソコンを開かないと進まないので、「いまパソコン開く気分じゃないな」と思った瞬間、作業が止まる。週次で発生する作業なのに、滞留する。これが結構ストレスでした。

行動経済学でいう"スイッチングコスト"が、ここで地味に効いていたわけです。

4. 第2段階:Claude Codeで1時間に

そこで次に使い始めたのが、Claude Code。

原理はProjectsと同じです。私の情報をあらかじめAIに伝えておいて、ネタを吹き込むと原稿を組み立ててくれる。違いは"自動でつないでくれる"範囲です。

私は今、Zoomの画面を一人で立ち上げて、一人でレコーディングして収録しています。録画を止めると、動画と音声のデータが書き出される。その音声データをClaude Codeに添付すると、自動で文字起こししてくれる。元の原稿は5分くらいの簡潔なものですが、私が話が長いものですから、実際の収録は20分くらいに膨らんでいる。その20分の音声を元に、コラム記事化、メルマガ化、説明文、SNS投稿まで一気にやってくれる。元の原稿ではなく、実際に喋った内容をベースにしてくれるので、より生っぽい記事になる。

さらにすごいのが、コマンドひとつで、それぞれを別ファイルとして作って、ポッドキャストのデータが入っているフォルダに保存までしてくれること。普通のAIツールは自分のパソコンのフォルダを直接操作したり、ファイルを勝手に作ったりしてくれないんですが、Claude Codeはそこまでやってくれます。

時間で言うと、ネタを吹き込むのに3〜5分、原稿の壁打ちに10分、収録に20分。ここまでで30分強。あとは自動変換されたものをチェック・微調整して投稿で15〜20分。合計で1時間ちょっと

手動の4〜5時間が、Projectsで2時間に、Claude Codeで1時間に。だいたい80%の時短です。最近では動画編集まで、Claude Codeでやっています。ちょっと前なら考えられなかった世界です。

5. あえて自動化しない、3つのポイント

ここまで聞くと「もう全部AIで良くない?」と思われそうですが、私はあえて自動化しないラインを3つ決めています。

5-1 1つ目:収録

私の音声をクローンしてAIに喋らせれば、収録自体が要らなくなる。原稿を作って、AI音声で読み上げて、ポッドキャスト風に書き出して、そのまま記事化、というのが技術的にはできてしまう。でもこれはやりません。

人間の声には「倍音」という、機械では出せない響きがあるそうなんですね。芸術系に詳しい友人いわく、波長や周波数の重なり方の中に、機械では再現できない響きが宿る。そして言葉と言葉の"間"、息づかい、揺らぎ。こういうところに人柄のようなものが宿るそうです。「この人の話を聴くと穏やかな気持ちになる」とか「この人の話だから聴こう」というのは、たぶんこのあたりに理由がある。だから、ここは私自身が直接喋る。

正直なところを言うと、私は自分が学んできたことや考えてきたことを共有するのが、意外と好きだということに、セミナーをやる中で気づきまして。喋ること自体が私のストレス解消にもなっているので、ここは自分でやり続けます。

逆に、日々の最新ニュースをわかりやすく解説するだけ、というような番組であれば、AIクローン音声でも問題ないかもしれません。用途次第、ということですね。

5-2 2つ目:ネタの仕込み

AIのリサーチ機能でテーマを1行投げれば、Web上の情報をいい感じにまとめて原稿にしてくれる。便利なんですが、これをやると、当たり障りのない、誰でも作れそうなコンテンツになる確率が上がる。その人の感性や価値観がにじみ出てこなくなってしまう。

私の場合は、普段からGoogleキープというGoogleのメモアプリにネタをためています。以前はiPhoneのメモを使っていたんですが、今後のGeminiとの連携を考えてGoogleキープに移しました。そのメモをそのままコピペでAIに渡してもいいし、もう少し熱量があるテーマなら、音声入力で2分くらい、気合が入ったテーマだと10分くらい、自分の頭の中を吹き込みます。これだけを素材に原稿が作られるので、Webリサーチに頼らなくても、私独特のものが出やすい。ここに時間をかけることは、惜しまない方がいいかなと思っています。

5-3 3つ目:ビデオpodcast化

北米では今、ビデオpodcastが流行ってきていて、AI音声よりも"人間が生で駄弁ってる感じ"のほうが評価される、というのを現地の友人から聞きました。だとすると、本気でやるならビデオ化までやった方が良いんだとは思います。

ただ、ビデオ化すると毎回顔出しして、身だしなみを整えて、というところまで踏み込むことになる。だんだん収録自体が億劫になっていく未来が、ありありと見える。私の余白がなくなってしまう。発信のために自分の余白を削るのは本末転倒なので、当面はやらないと決めています。発信が本業に近づくフェーズになれば、また考えるかもしれません。

6. "全自動"より、"どこを人間に残すか"が本質

AIをガンガン使っている人や、AI活用を推進する立場の人ほど「どこまで時短できたか」の競争になりがちなんですが、私はむしろ"どこを人間に残すか"のほうが本質に近いんじゃないかなとすら感じます。

振り切るほど、コンテンツから自分らしさや熱量が抜けていく。そうなると、最終的に「あなたの会社、あなた自身を選ぶ理由」が弱くなって、本末転倒です。

具体的な振り分けのイメージとしては、「0から20点を人間/20〜80点をAI/80〜100点を人間」という考え方です。

最初の指示出しや、1次情報をもとに方向性を決めるところが0〜20点で人間の領域。そこに沿ったたたき台作りが20〜80点でAIの領域。最後のブラッシュアップが80〜100点で、再び人間の領域。この振り分けでやっていくと、効率化と自分らしさを両立しやすい。

効率化は目的ではなく、余白を取り戻すための手段。空いた時間で読書する、家族と過ごす、自分の頭で考える。そのために仕組み化するわけで、コンテンツから自分が消えるまでAIに渡したら、本末転倒です。

7. まとめ

  • ポッドキャスト1本を全部手でやると4〜5時間。AIなしでは継続が難しい
  • Claude Projectsで2時間、Claude Codeでさらに1時間に圧縮できた(約80%の時短)
  • 音声データを渡せば、コラム記事・メルマガ・SNS投稿まで、コマンドひとつで整う
  • ただし、収録・ネタの仕込み・ビデオ化は、あえてAIに渡さない。倍音・1次情報・余白を守るため
  • 「0〜20点を人間/20〜80点をAI/80〜100点を人間」の振り分けが、効率化と自分らしさを両立させる

効率化の競争に巻き込まれそうになったときは、"どこまで時短したか"ではなく"どこを人間に残したか"を、自分の判断軸にしてみてはどうでしょうか。

皆さんが実利を得て、心や時間に余白を持って、幸せに生きられることを祈っております。

槙 優真

執筆者

槙 優真

ジェネラルコンサルティンググループ株式会社 代表取締役

現役のAI顧問として、中小企業の経営者に月額3万円〜で直接伴走中。AI活用と売れる仕組みの両輪で、「実利」と「余白」を同時に高める伴走支援を提供しています。