売上が落ちたとき、「集客を強化する」は逆効果かもしれない

槙 優真
槙 優真代表取締役 / 現役AI顧問ジェネラルコンサルティンググループ株式会社

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1. 要点のまとめ

  • 売上が落ちたとき、原因を「診断」せずに集客強化に走るのは逆効果になりやすい
  • パーソナルトレーニングジムの例で言えば、認知→興味→公式LINE→体験→入会のどこで離脱しているかを正確に把握することが先
  • マーケコンサル10年の経験では、「集客そのものが原因」だったケースは半分もない
  • まずは数値を集計して離脱箇所を特定すること。原因がハッキリしないときは支援者の力を借りる
  • 集客強化はその診断ができた後で良い

※ポッドキャストでは、より詳しく丁寧にお話ししています。音声での視聴が1番オススメです。

2. なぜ「集客強化」が逆効果になるのか

売上が下がると、つい「もっとお客さんを集めなきゃ」と思いますよね。広告を増やそう、SNSを頑張ろう、と。

でも、これってザルに水を注いでいるのと同じなんです。

Web広告を強化する場合であれば、広告費をどんどんかけているのに成約につながらない。売上が回復するどころか、利益だけが静かに削られていく。SNSを頑張る場合であれば、経営者自身やスタッフの時間をかけているのに成果につながらない。

だからこそ知っておいてほしいんです。集客を増やす前に、やるべきことがあるということを。

3. まずは「正しい診断」から

売上が落ちたときに集客を強化するのは、体の調子が悪いときに病院に行かず自己判断で対処するのに似ています。

たとえば、最近ずっと体がだるくて疲れが取れない。「きっと寝不足だろう」と思って、睡眠サプリを買ったり早寝を心がけたりする。でも一向に良くならない。さすがにおかしいと思って病院に行ったら、実はガンが見つかった——こういう話は、実際にあるんですよね。

自己判断の怖いところは、的外れな対処をしている間に、本当の原因が放置されてどんどん進行していくこと。もっと早く検査を受けていれば軽い治療で済んだのに、気づいたときにはかなり深刻な状態になっていた、ということが起こり得るわけです。

ビジネスもまったく同じです。

パーソナルトレーニングジムを例にしましょう。お客さんが入会するまでには、いくつかのステップがあります。

  • 広告やSNSでジムを知る
  • ホームページを見て興味を持つ
  • 公式LINEに登録する
  • 初回体験を予約する
  • 来店して、入会を決める

売上が落ちたとき、「広告が悪いんだろう」と決め打ちして広告費を増やす。これは、体がだるいのに「寝不足だろう」と自己判断してサプリを飲み続けているのと同じです。

10年マーケティングのコンサルをやってきた経験から言うと、実際に「集客そのものが原因」だったケースは、半分もありません。

4. よくある"誤診"のリアル

実際にあった話です。

あるパーソナルジムのオーナーさんから「Web広告がうまくいかなくなった。売上が落ちているので見直したい」とご相談をいただきました。

データを見せてもらうと、広告のパフォーマンス——クリック率やLPへのアクセス数——は、実はそこまで悪くなかった。

問題はその先にありました。公式LINEに登録してくれた人が、初回体験に来なくなっていた。さらに、来てくれた方の成約率も、以前の40%から15%まで落ちていた。

つまり本当の原因は「登録後のフォロー」と「体験時の接客やクロージング」だったんです。

もしここに気づかず広告費を倍にしていたら——アクセスは増える、LINE登録も増える、でも体験に来ない、来ても契約にならない。まさにザルに水を注ぎ続ける状態です。

早めに検査していれば対処できたのに、自己判断で関係ないサプリにお金を使い続けて、どんどん進行させてしまう。ビジネスでも、これと同じことが本当によく起きています。

5. 処方箋は「数値の集計」

じゃあ、正しい診断をするにはどうすればいいか。やることはシンプルで、毎月の数値を記録しておくことです。いわば、定期的な健康診断ですね。

パーソナルジムなら、こんな数字を月ごとに記録しておきます。

  • LPのアクセス数
  • 体験予約の件数と予約率
  • 成約数と成約率

これを並べて見るだけで、「あ、2月からアクセスは変わってないのに成約率だけ急に落ちてるな」と、原因の場所がすぐ分かるようになります。

逆にこれがないと、「なんとなく広告が悪い気がする」という勘で動くしかなくなる。検査を受けずに自己判断で対処しているのと同じです。

まだ集計の仕組みがないという方は、ExcelやGoogleスプレッドシートで、ざっくりした数字でいいので今月から始めてみてください。

6. 原因が"ハッキリしない"ときの考え方

ただ、毎回スパッと原因が見つかるかというと、そうでもないんですよね。「どの数字もちょっとずつ下がっている」「特に目立った異常が見当たらない」というケースも少なくないです。

この場合にまず考えたいのが、「一時的な波なのか、構造的な変化なのか」ということです。

ここで一つ知っておいてほしいのが、数字は母数が少ないとブレやすいということ。

たとえば、月に100件体験予約が来るジムで成約率が5%下がったら、それはかなり確かな変化です。でも、月に5件しか予約が来ないジムで、先月は2件成約、今月は1件。成約率で見ると40%から20%に「半減」したように見えますが、実際はたった1件の差ですよね。たまたまかもしれない。

こういう小さな数字のブレに振り回されて、慌てて施策を変えてしまうのはかえって危険です。1ヶ月の数字だけで判断せず、2〜3ヶ月の傾向を見るようにしてください。

その上でもう一つ有効なのが、業界基準と自社の数値を比べることです。パーソナルジムなら、体験からの成約率は一般的に30〜50%くらい。もし自社が20%なら伸びしろがある。逆に50%あるなら、集客側を強化した方がインパクトが大きいかもしれない。こうやって、限られたリソースを一番効くところに集中させるわけですね。

あとは、数値に表れない部分——近くに競合ジムがオープンしていないか、口コミ評価が下がっていないか——に目を向けることも大切です。

このあたりはかなり発展的な内容になるので、判断が難しいと感じたら、私のような専門家に相談してみるのもおすすめです。

7. まとめ

  • 売上が落ちたとき、いきなり集客を強化するのは、自己判断で見当違いの薬を飲むようなもの
  • まずは数値を見て、「本当の原因がどこにあるのか」を正しく診断すること
  • そのために、毎月のアクセス数・問い合わせ数・成約率を記録しておくこと
  • 数字の母数が小さいときは、月単位のブレに振り回されず、少し長い目で傾向を見ること

正しく診断できれば、打つ手は明確になります。焦っているときほど、一歩立ち止まって数字を見る。それが結果的に、一番の近道です。

皆さんが実利を得て、心に余白を持って、幸せに生きられることを祈っております。

槙 優真

執筆者

槙 優真

ジェネラルコンサルティンググループ株式会社 代表取締役

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