「指示を何度書き直しても、似たような答えしか返ってこない」
AIを仕事で使い始めると、一度はこう感じるのではないでしょうか?言葉を足しても、条件を細かくしても、返ってくる答えの浅さが変わらない。そのうち自分の書き方が悪いのだろうと考えて、プロンプトの本や記事を探し始める方も多いと思います。
先に結論を書きます。答えが浅いのは、指示の書き方のせいとは限りません。プロンプトを直す前に、次の2か所を見てみてください。
- どのAIに考えさせているか。同じサービスの中にも、速さを優先するAIと、じっくり考えるAIが入っています
- どれだけ考えさせているか。同じAIでも、考える量の設定が少ないままだと、本来の力が出ません
この2か所を変えるだけで、指示は1文字も変えないまま答えが良くなる。私が見てきた範囲では、そうした場面がかなりあります。
指示の出し方そのものはAIに質問させるプロンプトの記事に、ChatGPTの設定画面の場所はChatGPTの初期設定の記事にまとめました。この記事では、答えが物足りないと感じたときに、どこから疑い、どの順番で手を打つかを書きます。
【この記事の要点を1枚にまとめた図解】
1. プロンプトを書き直しても答えが良くならないのはなぜですか?
1-1 相談の中身が「書き方」から「設定」へ移ってきました
研修のあとに集まる感想で、いちばん多いのが指示の出し方の悩みです。「思うように指示が出せない」「プロンプトの書き方が課題」という声は、毎回のように出てきます。去年までは私自身も、相談を受けるとまずプロンプトの作り込みから一緒に考えていました。
ところが最近は、画面を共有してもらうと、指示とは別のところで止まっている方が増えています。9月のある日、何人かの方の相談を続けて受けた回では、ほぼ全員に同じ2か所の話をしました。どのAIを使っているか、そしてどれだけ考えさせているか、です。
1-2 指示を直しても変わらないときに起きていること
その日の相談を、中身が分からない形にして並べると、次のようなものでした。
- 元になる図面を渡して提案用の図を作らせたいのに、図面の形が反映されない
- 写真を見せて、基準を満たしているかどうかをAIに判定させたい
- 続けて何枚も作らせると、後半になるほど決めた形式が崩れていく
どれも、ご本人は指示の書き方を工夫してから相談に来ています。図面の件では手書きの補足まで添え、使う製品も指示していました。それでも何度作り直してもらっても、肝心の形が違ってしまうのです。
私がお伝えしたのは「プロンプトを微調整して変わる範囲を、もう超えていると思います」ということでした。ここまで工夫して変わらないなら、問題は書き方ではなく、AIそのものの性能の側にある可能性が高い。
見た目はばらばらの相談ですが、共通していたのは、AIの設定に上げる余地が残っていたことです。軽い設定のまま使われていたり、設定をまだ確かめていなかったりと、AIが本来の力を出せる状態にはなっていませんでした。そこで、指示を書き足す前に、まず2か所の設定を一緒に確かめるところから始めました。
1-3 指示の細かさより設定で差がつくようになった理由
背景には、AIそのものの変化があります。少し前までは、役割や前提を細かく書き込んだプロンプトを作り込まないと、思うような答えが返ってきませんでした。今のAIは言葉足らずの指示でも意図をかなり汲んでくれるので、ざっくり頼んでも、あとはAIのほうで進めてくれる場面が増えています。
その分、差がつく場所が変わりました。指示の細かさよりも、どれだけ賢いAIに、どれだけ考えさせているか。答えの質を左右するのが、こちらの2つになってきたのです。
2. 1か所目:どのAIに考えさせているかを見ていますか?
2-1 同じサービスの中に性能の違うAIが入っています
ChatGPT・Gemini・Claudeのどれも、中には性能の違うAIが何種類か入っています。専門用語でモデルと呼ばれるものです。すぐに答えを返す軽いモデルもあれば、時間をかけてじっくり考える賢いモデルもあります。
軽いモデルは速い代わりに、込み入った仕事では答えが浅くなりがちです。一方で賢いモデルに変えると、同じ指示のままでも、こちらの意図を汲んだ答えが返ってきやすくなります。その日も「モデルの性能を変えると、一発で解決したりするんですよ」と、何度かお話ししました。
2-2 今どれを使っているかは画面の隅に小さく出ています
厄介なのは、今どのモデルで動いているかが、入力欄の近くに小さく表示されているだけという点です。相談のなかで「今、どのモデルを使っていますか?」と聞くと、表示の場所を探すところから始まることがよくあります。
気づかないまま軽いモデルで使い続けていると、AIはこの程度のものだと思い込んでしまいかねません。答えが物足りないと感じたら、まずは画面の隅を見て、どのAIに考えさせているかを確かめてみてください。
もう1つ、契約しているプランも関わってきます。無料のままだと、選べるモデルが限られていることが多いからです。月数千円の有料プランにすると、いちばん賢いモデルまで選べるようになるのが一般的です。
3. 2か所目:どれだけ考えさせているかを見ていますか?
3-1 賢いAIでも考える時間が短いと力が出ません
もう1か所が、思考量と呼ばれる設定です。AIがどれだけ時間をかけて考えてよいかを決めるつまみ、と考えると分かりやすいと思います。
成績の良い人でも、難しい入試問題を数分で解けと言われたら答えられません。ところが1時間あれば、解けるかもしれない。AIも同じで、せっかく賢いモデルを選んでいても、思考量が少ない設定のままだと、あまり考えずにすぐ答えを返してきます。
図面の件では、画面を見せてもらうと、思考量が「軽い」になっていました。そこで、これを上から2番目の段階まで上げ、それでも足りなければモデルも新しいものに替えてみる、という順番を提案しています。呼び名はサービスごとに違いますが、どのAIでも、モデルを選ぶ場所の近くに考える量の段階が並んでいます。
3-2 設定を変えただけで直った例
形式が後半で崩れる件は、その場で確かめました。いちばん賢いモデルと高い思考量に切り替えて、続きの画像を3枚、さらに4枚とまとめて作らせたところ、前半で決めた見出しの形が最後まで保たれていたのです。指示のほうは「この続きを順番に3枚」という、ざっくりしたもののままでした。
3-3 いちばん上まで上げれば良いわけではありません
ただし、思考量はいつもいちばん上にしておけばよい、というものでもありません。考える量を上げるほど答えが返ってくるまでの時間が長くなり、利用の上限にも早く届くためです。賢いモデルを最上段の思考量で使うと、少し使っただけで、しばらく使えなくなることもあります。
3-4 私は「いちばん賢いモデル」と「上から2番目」に決めています
私自身は、その時点で使えるいちばん賢いモデルを選び、思考量は上から2番目(たとえば「超高」)にしたまま使うことがほとんどです。答えが返ってくるまで多少時間がかかっても、質の高い答えが最初に返ってきたほうが、結果として手直しが少なくて済むからです。
もう1つの理由は、設定をいちいち変えること自体が、頭の疲れにつながると考えているからです。この仕事は軽いから下げる、これは大事だから上げる、と毎回考えていると、その判断だけで頭を使ってしまいます。そのため私は、設定を細かく変えないようにしています。
答えが浅いと感じている方も、まずは一度この組み合わせまで上げてみてください。待ち時間や利用の上限がどうしても気になる場合だけ、思考量を1段下げる。一度決めたら、あとは仕事のたびに設定を考えずに済みます。
4. それでも直らないときは何をすればよいですか?
4-1 うまくいかない理由をAI自身に聞いてみる
2か所を変えても答えが良くならないとき、あるいは変える前に見当をつけておきたいときに打つ手は、AIに理由を聞くことです。「こう頼んだのに、こうならなかった。なぜですか?」と、そのまま尋ねます。
図面の件では、設定を変える前にこれを試しました。AIが返してきたのは、画像を作る仕組みは図面の線を固定してその上に描いているわけではない、という説明です。そのうえで、もっと詳しい配置の補足図があると役立つ、とも書いてきました。つまりこのときは、AI自身が「指示がまだ粗い」と答えたことになります。
この一手で、分かれ道が見えてきます。指示が足りないとAIが答えるなら、言われたとおりに補ってみる。指示は足りているのに直らないなら、設定の限界を疑う。やみくもにプロンプトを書き直すより、ずっと早く当たりがつきます。
4-2 できるかどうかを先に聞いておく
写真を判定させたい件では、頼む前に「この判定はできますか?何を伝えれば判定できますか?」とAIに聞くところから始めました。返ってきたのは、合否を決める役ではなく、見落としを拾うチェック役として使うほうが現実的だ、という答えです。
人間の専門家に相談するときと同じように、まず聞いてみる。それだけで、無理な頼み方をして時間を使う前に、AIに任せられる範囲が見えてきます。設定の場所が分からないときも、画面のスクリーンショットを撮って「これはどこで変えますか?」と聞けば、たいてい教えてくれます。
5. 設定を変えても直らないならどう判断すればよいですか?
5-1 粘りすぎずに切り替える
モデルも思考量も上げ、AIに理由も聞いた。それでも答えが変わらないなら、そこは今のAIにそのまま任せられる範囲の外にある、と考えます。同じ指示を何度も繰り返しても、時間だけが過ぎていくからです。実際、作り直しを頼み続けているうちに、その日の利用上限に届いてしまった方もいました。
切り替え先は、次の3つのどれかです。
- 任せ方を変える。写真の判定のように、合否を決める役から見落としを拾う役へと、AIの持ち場を小さくする
- 別のやり方を探す。同じことに成功している人のやり方を、AIエージェント(指示を受けて、調べものや作業まで進めるAI)に調べてもらい、うまくいきそうなものから順に試す。良い例と良くない例を分けて渡し、両方を見比べさせるといった頼み方の工夫も、ここに入ります
- 人がやるか、時期を待つ。今回は人の手でやり、数か月後に同じ指示をもう一度試す。AIは短い期間で入れ替わるので、今日うまくいかなかったことが、次の機会にはあっさりできることもあります
5-2 どこまで粘るかを決めるのも使い方のうち
AIを仕事で使うのは、時間と手間を減らすためのはずです。答えを良くすることに夢中になって、手でやれば1時間で終わる仕事に半日かけてしまっては、順番が逆になってしまいます。どこまで粘るかを先に決めておくことも、AIの使い方の一部だと私は考えています。
5-3 一人で見極めにくいときは
当社のAI顧問では「答えが物足りない」という相談を受けたとき、まず画面を一緒に見るところから始めます。どのモデルで、どれだけ考えさせているか。指示が足りないのか、設定の限界なのか。原因の切り分けを一緒に何度か経験すると、自分で判断できる場面が少しずつ増えていきます。
料金は月5万円からで、代表本人が対応します。中身はサービス詳細ページをご覧ください。今の使い方のどこで引っかかっているかを、無料の壁打ちで聞かせていただくところからでも構いません。
6. まとめ
- AIの答えが浅いのは、指示の書き方のせいとは限りません。プロンプトを直す前に、設定の2か所を見ます
- 1か所目は、どのAIに考えさせているか(モデル)。軽いモデルのまま使っていないかを、画面の隅で確かめます
- 2か所目は、どれだけ考えさせているか(思考量)。少ないままだと、賢いモデルでも力が出ません。いちばん上は時間と利用上限に響くので、私は上から2番目に決めて、細かく変えずに使っています
- それでも直らないときは、うまくいかない理由をAI自身に聞きます。指示の不足か、設定の限界かが分かれます
- 設定を変えても直らないなら、粘りすぎずに、任せ方を変える・別のやり方を探す・人がやるか時期を待つ、のどれかに切り替えます
7. FAQ|AIの答えが浅いときの設定についてよくある質問
Q1:無料プランでもモデルや思考量は選べますか?
A. サービスによって異なりますが、無料のままだと、選べるモデルや考える量の段階が限られていることが多いです。月数千円の有料プランにすると、賢いモデルと高い思考量を選べるようになります。答えが浅いと感じている方は、プランと設定の両方を一度確かめてみてください。
Q2:思考量はいつもいちばん上にしておけばよいですか?
A. いちばん上は、答えが返ってくるまでに時間がかかり、利用の上限にも早く届きます。私は、いちばん賢いモデルに上から2番目の思考量を組み合わせ、そのまま変えずに使っています。仕事のたびに設定を変えると、その判断だけで頭が疲れてしまうためです。
Q3:ChatGPT・Gemini・Claudeのどれでも同じ考え方ですか?
A. 同じ考え方で使えます。呼び名や画面の場所はサービスごとに違っても、どれもモデルを選ぶ場所と、考える量を選ぶ場所の2つを持っているためです。表示が見つからないときは、画面のスクリーンショットをAIに見せて、どこで変えるのかを聞くのが早いと思います。
Q4:モデルを変えたら、プロンプトは工夫しなくてよいのですか?
A. 指示の工夫が要らなくなるわけではありません。ただ、最近のAIはざっくりした指示でも意図を汲んでくれることが多いので、先に設定を見直したほうが早く直る場面がよくあります。それでも足りなければAIに理由を聞き、指示の不足を指摘されたら補う、という順番にしています。
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執筆者
槙 優真
ジェネラルコンサルティンググループ株式会社 代表取締役
現役のAI顧問として、中小企業の経営者に月額5万円〜で直接伴走中。AI活用と売れる仕組みの両輪で、「実利」と「余白」を同時に高める伴走支援を提供しています。




