「プロンプトの書き方で、何か良い本はありますか?」
AI顧問の現場で、クライアントAさまからこう聞かれました。社内でAIを使う人が増え、社長ご自身より上手に使いこなす社員が出てきた。上手な人とそうでない人を見比べると、差はAIの知識ではなく、どうも言葉にする力にあるらしい。だから、プロンプト(AIへの指示文)の書き方を本で学び直したい。そのような相談でした。
先に結論を書きます。本を探す前に、いつもの指示文の最後に次の1行を足してみてください。
作業に入る前に、追加で必要な質問があれば3つまでしてください。質問がなければ「確認事項なし」と言って、そのまま進めてください。
これだけで、AIのほうから足りない情報を聞き返してくるようになります。私自身、指示が足りていなさそうなときによく使っている方法です。この記事では、なぜこの1行が本より早いのか、実際にAIが何を聞いてくるのか、そして打つのが面倒なときの逃げ道まで書きます。経営者に限らず、仕事でAIを使う人なら誰でも同じように使えます。
1. 「プロンプトの本、何か良いものはありますか?」と聞かれて
Aさまの会社では、提案書や仕様書のたたき台をAIに作らせる使い方が定着していました。出てくるものはまずまずの水準で、社長ご自身の働き方も変わってきた。そのうえで出てきたのが、冒頭の相談です。
私の答えは「本はおすすめしません」でした。理由は3つあります。
- AI向けの言語化を教える本が、ほとんど見当たらない。言語化そのものを扱う本はありますが、AIへの指示に特化したものではないため、読んでから「少し違う」と感じるかもしれません
- 忙しくて本を読む時間をなかなか捻出できない人も多い。読む時間を確保したうえで、本の内容を自分の仕事に当てはめ直す手間もかかります
- 仕事しながら自然に鍛えられるほうが早い。プロンプトは毎日書くものなので、書く場面そのものを練習にしたほうが身につきます
そこで代わりに渡したのが、次の1行です。
作業に入る前に、追加で必要な質問があれば3つまでしてください。質問がなければ「確認事項なし」と言って、そのまま進めてください。
私自身、指示が足りていなさそうなときや、急いでざっくり指示してしまったときは、この1行でAIに質問してもらい、確認事項を先に潰しています。そのうえで作業に入ってもらうほうが、返ってくるものの質が明らかに上がるためです。
2. 同じ会社の中でも、AIが上手な人と苦手な人がいるのはなぜ?
Aさまの会社では、社員の皆さんが同じAIサービスを使っています。ツールも契約も同じなのに、人によって引き出せる答えの質に差が出る。ChatGPT・Gemini・Claudeのどれを使っても、この差は同じように出ます。
差の正体は、自分が何を求めているかを言葉にできているかどうかです。指示を緻密に書ける人は良い答えを引き出し、勢いで書く人は伝え忘れが多い。私が見てきた範囲でも、この傾向はどの会社にも共通しています。
苦手な人の指示には、たいてい同じものが抜けています。
- 誰向けか。できあがった文章や資料を、誰が読むのか
- 前提。何のために、どのような場面で使うのか
- 出力の形。分量、形式、口調、参考にしてほしい過去の資料
たとえば「この議事録を要約して」とだけ書いた指示と「この議事録を、欠席した部長に共有するために、決定事項と担当者を中心に箇条書き5行でまとめて」という指示では、返ってくるものがまるで違います。後者には、誰向けか、何のためか、どのような形か、がすべて入っています。
「良い感じにまとめて」で通じるのは、その人の頭の中を知っている相手だけです。AIは知りません。
ただ、これは能力というより慣れの問題かと思います。自分の頭の中にあることと、相手に伝わっていることの差に気づく機会がないと、同じ指示を書き続けてしまう。その機会を、AI自身に作らせるのが先ほどの1行です。
3. 1行足すだけ|「作業に入る前に、必要な質問を3つまでして」
3-1 使い方
いつもの指示文の末尾に、次の1行をそのまま貼ります。
作業に入る前に、追加で必要な質問があれば3つまでしてください。質問がなければ「確認事項なし」と言って、そのまま進めてください。
ChatGPT・Gemini・Claudeのどれでも、動き方は同じです。毎回貼るのが面倒なら、各サービスにある「カスタム指示」(AIへの共通の指示をあらかじめ登録しておく設定。サービスによって名称は異なります)に入れておくと、毎回書かずに済みます。Claude Codeのように対話しながら進めるAIエージェントでも、考え方は同じです。
3-2 実際にAIが聞いてくること
たとえば「先週の打ち合わせのメモから、提案書のたたき台を作って」という指示に、この1行を付けたとします。すると、作業に入る前にこのような質問が返ってきます。
- この提案書は、誰に向けたものですか?(先方の担当者か、決裁者か)
- 提案の目的は何ですか?(新規の受注か、既存のお客さんへの追加提案か)
- 形式の指定はありますか?(Wordで1枚か、箇条書きか、スライドか)
いずれも、指示に入っていなかったことです。「決裁者向け・追加提案・Word1枚」と答えれば、AIはそれを前提に書き始めます。答えずに作らせていたら、AIが勝手に置いた前提で仕上がり、そこから直しの往復が始まっていたはずです。
私自身の例も挙げます。ある講義の資料を「案内文にして」とだけ頼んだとき、返ってきた質問は「誰向けですか」「どこに載せますか」「分量はどのくらいですか」の3つでした。頭の中では顧問先の社長向けと決めていたのに、指示には一言も入れていなかった。そこで気づいて答え、チャットに箇条書きで出してもらう形に決めました。慣れているつもりでも、このような抜けは起きます。
質問への答え方に決まりはありません。選択肢が出ればそれを選んでも、自由に書いても大丈夫です。自分の言葉で答えるほど、AIの理解は深くなります。
3-3 何が起きるか
この1行を付けて使い続けると、2つのことが起きます。
- 伝え忘れに、その場で気づけます。毎回同じことを聞かれるうちに「誰向けかは最初から書いておこう」となり、指示に必要な要素が自然と盛り込まれるようになります
- 返ってくる答えの質が上がります。AIが必要だと判断したことに答えているので、AIが推測で埋める部分が減ります
1つ目が言語化の練習で、2つ目がその日の成果です。両方が同時に手に入るのが、本より早いと言っている理由です。
3-4 「3つまで」と「なければ進めて」にしている理由
上限を付けないと、AIは10個ほど質問してくることがあります。答えるのが面倒になり、結局使わなくなる。3つなら1分で答えられます。足りなければ「あと3つ聞いて」と言えば済みます。
「質問がなければそのまま進めて」も外せません。これがないと、簡単な作業でも毎回止まって聞いてくるようになり、煩わしさのほうが勝ってしまいます。
3-5 一発で完璧な指示を目指さない
この方法の背景には、プロンプトへの考え方の違いがあります。最初から緻密な指示文を作り込むのではなく、ざっくり指示して、質問に答え、出てきたものに感想を返して直す。この往復で仕上げていくやり方です。
出てきたものへの感想は、細かいほど次が良くなります。「ここは既にできているので不要」「ここは特にやりたい」「ここが重たいので軽くしてほしい」。一つひとつ返すと、AIの側も次に何を聞けばよいかが分かってきます。Claude Codeのように、やり取りの内容を覚えておくよう頼めるAIエージェントなら「ここまでのフィードバックを記憶しておいて」と伝えるだけで、次回から同じ前提を説明せずに済むようになります。
4. 打つのが面倒なら、声で言う
質問に答えるのも、出てきたものに感想を返すのも、タイピングだと短くなりがちです。打つのが面倒で、つい「OK」「もう少し短く」で済ませてしまう。それでは伝わる情報が増えません。
私の場合、出てきた内容を上から順に見ながら、音声入力で10分ほど話し込むことがあります。「この項目は既に済んでいる」「ここは特に力を入れたい」「この見積もりの部分が重たいので、どうにか軽くしたい」。話すほうが、打つよりはるかに情報量が増えます。
音声入力は、小声でも十分に認識します。パソコンに少し顔を近づけて話す程度で読み取ってくれるので、カフェでも使えます。副次的な効果として、長文を打たなくなるので猫背にならず、首や肩のこりが軽くなりました。これは思っていた以上に効いています。
AIが言い間違いや「えー」「あのー」を整えてくれる音声入力のアプリを使うと、さらに楽になります。無料枠のあるものもあるので、まず試してみるのがおすすめです。
職場で声を出しにくい場合は、タイピングでも大丈夫です。その場合も「AIの質問に答える」形なら、書く量は少なくて済みます。ゼロから指示文を組み立てるより、聞かれたことに答えるほうがずっと楽なはずです。
5. 本を1冊読むより、仕事の中で鍛えられる理由
未経験者向けの研修では、プロンプトの書き方から教えるときに「薬膳シチュー」という型もお話ししてきました。ただ、研修後の感想でいちばん多いのは「何を書けばよいか分からない」という声です。書き方は分かっても、書く中身が頭から出てこない。ここで止まる人が多い印象です。
質問させる方法は、その中身をAIが引き出してくれます。誰向けかを聞かれて答える。何のためかを聞かれて答える。これを繰り返すうちに、指示に何を書けばよいかが体で分かってきます。
本の場合は、読む時間に加えて、内容を自分の仕事に当てはめ直す手間がかかります。仕事の中なら、毎日数回、AIに聞き返されて答えるだけです。1か月も続けると、聞かれる前に書けている項目が増えていることに気づくのではないでしょうか?
これは経営者に限った話ではありません。営業でも事務でも、AIに何かを頼む人であれば同じように使えます。社内でAIの上手な人と苦手な人の差が気になっているなら、本を配るより、この1行を全員のカスタム指示に入れることをおすすめしたいです。個人の差が縮まり、社内の指示の書き方が自然と揃っていきます。会社としてAI活用をどこから手を付けるかは中小企業のAI活用は何から始める?にも書きました。
当社の顧問サービスでは、コンサルで画面を共有しながら、実際の指示文を一緒に直しています。料金は月5万円からで、代表本人が対応します。プランの中身はサービス詳細ページにまとめました。まずは無料の壁打ちで、今つまずいている指示文を1つ持ってきていただくのでも十分です。
6. まとめ
- プロンプトがうまく書けない原因は、AIの知識ではなく、自分の求めていることを言葉にできていないことにあります
- 本で学ぶより、いつもの指示文に「作業に入る前に、追加で必要な質問があれば3つまでしてください。質問がなければ『確認事項なし』と言って、そのまま進めてください」の1行を足すほうが早いです
- AIが聞いてくるのは、誰向けか・前提・出力の形。答えるうちに、最初から書けるようになっていきます
- 打つのが面倒なら、音声入力で答える。小声でも認識し、情報量が増えます
- 経営者に限らず、仕事でAIに何かを頼む人なら誰でも同じ効果があります
7. FAQ|AIに質問させるプロンプトについてよくある質問
Q1:どのAIでも使えますか?
A. ChatGPT・Gemini・Claudeのいずれでも同じように動きます。Claude CodeのようなAIエージェントでも同じです。各サービスの「カスタム指示」に入れておくと、毎回書かずに済みます。
Q2:毎回質問されるのが煩わしいときは、どうすればよいですか?
A. 「質問がなければそのまま進めてください」の一文を必ず入れておいてください。それでも多いと感じる場合は、簡単な作業のときはこの1行を外すか「質問は1つまで」に減らすのも一つの方法です。
Q3:AIの質問に答えられないときは?
A. 「分からない」「まだ決めていない」と答えて大丈夫です。AIは仮の前提を置いて進めるか、選択肢を出してくれます。答えられなかったこと自体が「自分でもまだ決めていなかったこと」の発見になるので、そこから考え始めるのが良いかと思います。
Q4:質問に答えるぶん、二度手間になりませんか?
A. 質問に答えるのは1分ほどです。答えずに作らせると、出てきたものを見てから直しの往復が始まるので、合計ではこちらのほうが早く終わることがほとんどです。慣れてくると、質問される回数自体が減っていきます。
Q5:社内に広めるには、どうすればよいですか?
A. 全員の「カスタム指示」にこの1行を入れる、が最も簡単です。社内の共通ルールにしておくと、指示の上手な人と苦手な人の差が縮まり、指示の書き方が社内で自然と揃っていきます。本を配るより、こちらのほうが定着しやすいかと思います。
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執筆者
槙 優真
ジェネラルコンサルティンググループ株式会社 代表取締役
現役のAI顧問として、中小企業の経営者に月額5万円〜で直接伴走中。AI活用と売れる仕組みの両輪で、「実利」と「余白」を同時に高める伴走支援を提供しています。



