AIで作ったと、お客様に伝えるべきですか?|言う/言わないの分かれ目

槙 優真
槙 優真代表取締役 / 現役AI顧問ジェネレンス株式会社

「AIで下書きした提案書を、このままお客様に出してよいのだろうか?」 「出すとして、AIで作ったと一言添えたほうがよいのだろうか?」

AIを仕事で使うようになると、こうした迷いが出てきます。言えば手を抜いたように思われそうですし、言わなければ隠しているようで落ち着かない。どちらを選んでも、すっきりしないのではないでしょうか?

先に結論を書きます。伝えるかどうかは、好みや気分で決めるものではありません。AIに任せた場所で決まります。

  1. 中身を自分で判断したものは、言わなくても構いません。何を書くか、何を勧めるかは自分で決めていて、AIは文章を整えたり、たたき台を出したりする道具として使っただけだからです
  2. 判断までAIに任せたものは、言わないままだと、後で信用を失いやすくなります。自分でも中身を確かめられないものを、確かめたような顔で渡すことになるためです

この記事で扱うのは、AIの答えが合っているかどうかではなく、作ったものをお客様にどう見せるか、のほうです。答えの確かめ方は、AIの答えをどこまで信じるかを書いた記事にまとめました。

【この記事の要点を1枚にまとめた図解】

図解:AIで作ったと、お客様に伝えるべき? 結論は「分かれ目は好みではなく、AIに任せた場所」。言う/言わないの分かれ目を3つにまとめています

1. 「AIで作りました」と言うべきか、迷うのはどんな場面ですか?

1-1 迷う場面は、お客様の目に触れるものに集まります

AIを使う範囲が広がるにつれて、お客様の目に触れるものにもAIが入ってきます。たとえば、次のようなものです。

  • 提案書や見積もりに添える説明文
  • 商品の紹介文や、SNSの投稿
  • お客様に提供する仕組みやツール
  • 調べものをまとめた報告書

社内のメモや議事録なら、AIで作ったかどうかを気にする人はほとんどいません。迷いが出るのは、それがお客様の手に渡るとき、つまり自社の名前で外に出るときです。

1-2 渡してよいかではなく、言うかどうかの話です

ここで1つ、話を分けておきます。AIで作ったものをお客様に渡すこと自体は、もう珍しくありません。提案書の下書きや紹介文にAIを使うことは、私が見てきた範囲でも、当たり前の光景になってきました。

なので、この記事では渡すことを前提にしています。渡すのは前提で、そのうえで言うかどうかの話です。

1-3 気分で決めると、毎回迷います

言う・言わないをその都度の気分で決めていると、同じ種類のものでも、ある日は添えて、別の日は添えない、ということが起きます。社員が何人かいれば、人によって扱いがばらばらになることもあるでしょう。

迷いを減らすには、決める基準を1つ持っておくのが近道です。その基準が、次に書く「AIに任せた場所」になります。

2. 言うか言わないかは、何で分かれますか?

2-1 判断を自分でしたか、AIにさせたか

AIの使い方は、大きく2つに分けられます。

1つは、中身を自分で決めて、形にするところをAIに手伝ってもらう使い方です。何を書くか、どの数字を出すか、何を勧めるかは自分が決めていて、AIは文章を整えたり、たたき台を出したりしている。私はよく、最初と最後を人が持ち、間をAIに任せる形としてお伝えしています。0点から20点までの方向づけを人が、20点から80点までをAIが、80点から100点の仕上げを再び人が受け持つ、という分け方です。

もう1つは、判断そのものをAIに任せる使い方です。何が大事か、数字が何を意味するか、どれを勧めるか。そこまでAIが決めていて、自分は出てきたものを確かめずに、あるいは確かめられないまま使っている状態です。

中身を自分で判断した 判断までAIに任せた
AIの役 下書き・文章の整え・たたき台 何が大事か、どれを勧めるかの判断
自分の役 方向を決め、中身を確かめて仕上げる 出てきたものを受け取る
お客様に聞かれたとき 自分の言葉で説明できる 説明できないところが残る
伝えるか 言わなくても構わない 言わないままだと、後で信用を失いやすい

2-2 中身を自分で判断したものは、道具の話にとどまります

前者の場合、AIは電卓や表計算ソフトと同じ、道具の側にいます。お客様が知りたいのは、中身が正しいか、自分の役に立つかであって、どの道具で書いたかではないはずです。

たとえば提案書なら、どのお客様に何を勧めるか、どの数字を出すかを自分で決め、文章の整えや言い回しだけをAIに任せたとします。この場合、お客様が受け取るのは、書いた人の判断そのものです。中身を自分で判断している以上、責任を持つのは書いた本人で、そこはAIを使っても使わなくても変わりません。

2-3 判断まで任せたものは、自分でも中身が分かりません

後者が危ういのは、渡した本人も中身を確かめていないところにあります。

クライアントAさまの社長が、AIエージェント(指示を受けて、パソコン上の作業まで進めるAI)に任せた作業の結果を報告してくださったことがあります。その中に「URL結合率67.6%」という数字がありました。いかにも専門の指標のような名前ですが、私はこれを、AIが照合の作業のためにその場で作った言葉ではないかと考え、そうお伝えしました。社長がAIに確かめたところ、その通りだったそうです。

社長からは、こう返ってきました。「こういうことも、知らないことだと、そのまま信じてしまいます」。

これは社内でのやり取りだったので、大ごとにはなりませんでした。ただ、同じ数字がお客様向けの報告書に載っていたらどうでしょうか?お客様は、それを業界で使われている指標だと受け取りますし、聞かれても、こちらは説明できません。AIで作ったことを言わずに渡し、後でそれが分かったとき、失うのは数字1つぶんの信用では済まないかもしれません。

2-4 判断を任せたときは、確かめてもらうか、添えて渡す

では、判断までAIに任せたものは、どう扱えばよいのか。私がおすすめしているのは、次のどちらかです。

  • 渡す前に、その分野が分かる人に中身を確かめてもらい、自分で説明できる状態にする
  • 確かめきれない部分が残るなら、AIで作ったことと、どこまで確かめたかを添えて渡す

1つ目は、判断まで任せたものを、自分で判断したものの側へ戻す方法です。どちらも難しいときは、渡す範囲を、自分で説明できるところまで絞るという手もあります。

3. 社内で使うものと、お客様に渡すものは、どう分けて考えますか?

3-1 社内用は、止まっても手で回せるかで見ます

AIで仕組みを作るときにも、同じ考え方が出てきます。

クライアントBさまとは、業務の自動化をどう組むかを一緒に考えてきました。その中で私が一貫してお伝えしているのは、お客様に提供する仕組みを、ブラックボックスのまま渡すのは避けたい、ということです。AIエージェントを使えば、専門の技術者でなくても形にはできます。ただ、出来上がったものの中身を誰も説明できず、誰も直せない状態でお客様に渡すと、不具合が出たときに手の打ちようがありません。

一方で、社内で使う仕組みなら話は変わります。Bさまと一緒に、社内でニュースを集める仕組みを作ったときには、こうお話ししました。お客様に提供するものは、どう動くかを最終的に人が保証しないといけない。けれど社内のニュース集めなら、仮にAIが止まっても、手でチェックすれば回る。だから、ありだと思います、と。

この線引きは、作るときだけでなく、伝えるときにもそのまま使えます。

3-2 お客様に渡すものは、説明できる形で作っておく

ここから言えるのは、お客様に渡すものは、AIを使ったかどうかより先に、中身を説明できるかどうかが問われる、ということです。説明できる形で作っておけば、AIを使ったことを聞かれても困りません。逆に、説明できない形のまま渡すと、言っても言わなくても不安が残ります。

社内向けは、自分たちが困らなければ速さを優先して構いません。お客様向けは、後で中身を直せて、説明できる形にしておく。同じAIの使い方でも、誰の手に渡るかで、求められる仕上げが変わるわけです。お客様に提供する仕組みを外に頼むときの考え方は、AI開発はどこに頼む?に書きました。

4. 「ここはAIを使わない」と先に決めている会社はありますか?

4-1 見える部分はAIなしで作ると決めていた会社

ご相談いただいた方の中に、子ども向けの商品を作る会社の経営者がいました。AIエージェントもご自身で触っていて、AIを仕事で使うこと自体には前向きな方です。

その方が決めていたのは、短い動画を作るとき、絵コンテ(動画の流れを描いた下書き)にはAIを使ってよいが、実際に目に見える形にするところはAIを使わない、ということでした。私からも、簡単な動画ならAIでも作れるものの、AIらしい安っぽい仕上がりになりやすいので、やらないほうがよいように思う、とお伝えしました。

理由として挙がったのは、会社の立ち位置です。手間を惜しまずに作っているという姿勢そのものが、この会社の商品の一部になっている。だから、自分たちから「AIを使っていません」と言うことはないにしても、見える部分はAIなしで作り続けたほうがよい。その場で、そういう判断が言葉になりました。

4-2 使う場所を先に決めると、言うかどうかで迷わない

この会社の決め方で参考になるのは、言う・言わないで迷う前に、使う場所そのものを決めているところです。お客様に見えるところはAIなしで作ると決めてあれば、伝えるかどうかで迷う場面は、そもそも起きません。

どこをAIなしにするかの基準は、自社がお客様に何を約束しているか、だと私は考えています。手作りの温かさを大切にしている会社なら、その温かさが伝わる部分。専門家の見立てを届けている会社なら、その見立ての部分。約束に触れるところは人が持ち、それ以外の下ごしらえにAIを使う、という分け方です。

5. 伝えるときは、どう伝えるとよいですか?

5-1 謝るのではなく、手順を見せます

AIを使ったことを伝えると決めたとき、つい「すみません、AIで作ったのですが」と前置きしたくなります。ただ、謝る形で伝えると、お客様は中身まで疑ってしまいがちです。伝えるなら、どこをAIに任せ、どこを人が確かめたか、という手順を見せるほうが、安心につながります。

たとえば、次のような違いです。

謝る伝え方
すみません、こちらはAIで作った資料になります。

手順を見せる伝え方
下書きはAIで作り、数字と結論は私が確認しています。
気になる点があれば、根拠になった資料もお見せできます。

調べものをまとめた報告書なら
情報の収集と整理にAIを使っています。
出どころは各項目に添えてあり、判断に関わる部分は担当者が確かめました。

手順を見せると、お客様は「どこまで人が見ているか」が分かります。AIを使ったこと自体より、そこが分からないことのほうが、不安の元になっているからです。

5-2 聞かれたら、隠さずに同じ手順で答える

お客様のほうから「これはAIで作ったのですか?」と聞かれることもあるでしょう。そのときに大切なのは、隠さないことです。言わずに渡したものでも、聞かれたら手順で答える。中身を自分で判断していれば、答えに困ることはありません。

逆に、聞かれて答えに詰まるなら、それは判断までAIに任せていた合図かもしれません。その場合は、次から渡す前に確かめる手順を1つ足しておくと、同じ場面で詰まらずに済みます。

5-3 社内で扱いをそろえておく

社員が何人かいる会社では、この扱いを人任せにしないことも大切です。どの種類のものは言わなくてよく、どの種類のものは添えるのか。どこはAIを使わないのか。決めたことを短く書いておくだけで、人によって扱いがばらばらになるのを防げます。

5-4 当社の場合

当社の顧問では、どの仕事をAIに任せ、どこを人が持つかを、会社ごとに一緒に決めています。お客様に渡すものと社内で使うものを分け、渡すものは中身を説明できる形にする。伝え方の迷いも、その延長で一緒に考えられます。

料金は月5万円からで、代表本人が対応します。中身はサービス詳細ページをご覧ください。自社のどこにAIを使い、どこを人が持つか。顧問の無料体験で、今の状況を聞かせていただければと思います。

6. まとめ

  • 伝えるかどうかは、好みではなく、AIに任せた場所で決まります
  • 中身を自分で判断したものは、言わなくても構いません。AIは道具の側にいて、責任を持つのは自分です
  • 判断までAIに任せたものは、言わないままだと後で信用を失いやすくなります。確かめられる人に見てもらうか、どこまで確かめたかを添えて渡します
  • お客様に渡すものは、説明できる形で作っておくと、聞かれても困りません
  • 使う場所そのものを先に決めておくと、言うかどうかで迷う場面が減ります
  • 伝えるときは謝らず、どこをAIに任せ、どこを人が確かめたかを見せます

7. FAQ|AIで作ったものの伝え方についてよくある質問

Q1:AIで作ったことを言わずに渡すのは、問題になりませんか?

A. 中身を自分で判断し、説明できる状態なら、AIは道具の1つとして使っただけです。ただし、契約や取引先の決まりで、AIを使ったかどうかの申告が求められている場合は、そちらが先になります。迷うときは、相手の決まりを先に確かめておくと安心です。

Q2:お客様に「AIで作ったのですか?」と聞かれたら、どう答えればよいですか?

A. 隠さずに、どこをAIに任せ、どこを人が確かめたかを伝えます。「下書きはAIで作り、数字と結論は私が確認しています」のように、手順で答えるのがおすすめです。謝る形にすると、中身まで疑われやすくなります。

Q3:社員がAIで作った資料を、そのままお客様に出していないか心配です。

A. 出す前に、中身を説明できる人が確かめる手順を1つ挟むのが近道です。あわせて、どの種類のものはAIを使ったと添えるのか、どこはAIを使わないのかを社内で短く決めておくと、人によって扱いがばらばらになるのを防げます。

Q4:AIを使わない仕事は、どう決めればよいですか?

A. 自社がお客様に何を約束しているかから考えるのがおすすめです。約束に触れる部分は人が持ち、それ以外の下ごしらえにAIを使う、という分け方です。私が見てきた範囲でも、お客様に見える部分だけはAIなしで作ると決めている会社がありました。

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槙 優真

執筆者

槙 優真

ジェネレンス株式会社 代表取締役

現役のAI顧問として、中小企業の経営者に月額5万円〜で直接伴走中。AI活用と売れる仕組みの両輪で、「実利」と「余白」を同時に高める伴走支援を提供しています。

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