ナイアガラの滝から帰って気づいた、「共同体感覚」と「余白」の話

槙 優真
槙 優真代表取締役 / 現役AI顧問ジェネラルコンサルティンググループ株式会社

※この記事は、ポッドキャスト『実利と余白』エピソード#21「ナイアガラの滝から帰って気づいた、「共同体感覚」と「余白」の話」の内容を記事化したものです。

【音声で聴く方はこちら(約17分)】

🎧 https://www.general-cg.com/podcast

(テキストで読む方は、このまま読み進めてください)

1. 要点のまとめ

  • 大自然のスケール感は、本で読むのと実際に体感するのとで情報の質がまったく違う
  • 「自分は自然や宇宙のほんの一部だ」という感覚を持てると、相手とも「同じ人間」という共通点を感じやすくなる
  • 共通点が見えるとラポール(親しみ・安心感)が生まれ、人間関係が深まり、結果として顧客満足や成果にもつながる
  • これによりアドラー心理学でいう「共同体感覚(幸福の指標)」にも至りやすくなる
  • 経営者がお金・時間・人員・設備・心、さまざまな"余白"を持っておくことで、経営にもメリットがある

※ポッドキャストでは、より詳しく丁寧にお話ししています。音声での視聴が1番オススメです。

2. ゴールデンウィークに、パソコンを置いて北米に

ゴールデンウィークに10日ちょっと、アメリカのニューヨークとカナダのトロントへ行ってきました。本来はトロントだけのつもりでした。トロントにある大学院でAIと心理学・統計学を絡めた研究をしている友人がいて、その方に会うのが目的だったのです。すると「トロントとニューヨークは飛行機で2時間ほどだよ」と教えていただき、せっかくならばと初めてニューヨークにも寄ってきました。

このポッドキャスト・コラムのタイトル通り「実利と余白」ですから、余白を堪能するためにパソコンも自宅に置いていきました。10日以上もパソコンを置いておくと仕事ができなくなるため少しヒヤヒヤしましたが、結果的には置いていって正解だったと感じています。

そしてこの旅で、ナイアガラの滝にも行ってきました。世界三大瀑布と呼ばれる、非常に大きな滝です。現地ではただただ「余白」を堪能していましたが、帰国してから振り返ってみると、これがAI時代の経営にも繋がる話なのではないかと、考えるようになりました。

3. ナイアガラの滝で、自分の事業のスケール感が一瞬で吹き飛んだ

ナイアガラの滝の真横まで行ってみましたが、本当に圧倒されました。見たことがないほどの量の水がずっと下に流れており、思わず「これは、なくならないのだろうか」と素朴に感じてしまったほどです。

あとで調べてみると、周りに五大湖という大きな湖があり、なくならない自然の中で循環しているそうです。とんでもない規模の地球レベルの循環がそこにあり、自分の事業や売上といったスケール感が一瞬で吹き飛ぶような感覚を覚えました。

ニューヨークでも、同じような感覚を味わいました。私は山形出身で、東京に出てきた時も規模感の違いに驚愕しましたが、東京からニューヨークに行った時も驚愕しました。とんでもない高層ビル群、日本にはない細長いビル、巨大な公園。当たり前のように地下鉄の改札を飛び越えて乗る人がたくさんいるのに、誰も逮捕されず黙認されている。一昨年に行ったバルセロナでは、平日の朝からカフェでビールを飲み続けている人が大勢いる衝撃の光景を見ました。パリでは、昼間からワインを当たり前に飲んでいる方々も見ました。

こうした光景を浴びていると、自分は自然や宇宙の中でたまたま日本に生まれた、ほんの一部に過ぎないのだと、理屈ではなく体感する瞬間がありました。

本で「人間は自然の一部です」と読むのと、実際にナイアガラの前で水しぶきを浴びながら感じるのとでは、情報の質、得られるものが全く違います。"知っている"と"体感している"の差といえるでしょうか。これはやはり、実際に行ってみないと得られないものだと、改めて感じました。

そしてこの感覚は、当然ながらAIには味わえません。さらに、その経験から自分の中に育まれる、理屈ではない「感覚」も、AIには代替できない領域だと思います。だからこそ、その中にAI時代の経営の気づきがいろいろと詰まっているのかもしれない。

そう考えて、自分の中で深掘りしてみたわけです。

4. 自然のスケール感が、人間関係の質を変える

少し前にベストセラーになった『嫌われる勇気』という本、読まれたことはあるでしょうか?

私はしばらく読んでいませんでした。タイトルを見た瞬間に勝手に勘違いして、「嫌われる勇気ということは、人に嫌われることを恐れず自分のやりたいことを自由にやろう、そんな結論だろう。ならば読まなくてもよい」と自己完結していたのです。

しかし、何かのタイミングでオーディブルで聞き流してみると、私が勘違いしていた話とはだいぶ違って、もっと深く、もっと良い内容でした。とてもおすすめなので、ぜひ読んでみてください。

この本はアドラー心理学を題材にしていて、その中に「共同体感覚」という考え方があります。心理学者のアドラーが提唱した概念で「他者を仲間とみなして、自分が誰かの役に立っている、貢献できていると感じること」を指す言葉です。アドラー心理学では、これを人間関係のゴールであり幸福の指標としています。

これがさきほどの自然の話と、どうつながるのかという話です。

たとえば、初対面の相手の肩書や年収、経歴や年齢、会社の年商や利益を意識して、ご自身の振る舞いが微妙に変わる、少し萎縮してしまう──そんな経験はないでしょうか。私は過去によくありました。今もたまに起きているかもしれませんが、昔よりはずいぶん減ってきました。

これが、自然の中で芽生える感覚を持つようになると、変わってくる気がしています。「自分も相手も、同じく自然や宇宙の一部であり、同じ人間なのだ」──これを理屈ではなく感覚的に感じられるようになると、相手の肩書や年収などに関係なく、「同じ人間なのだ」という共通点で相手を捉えやすくなります。「こんなに宇宙や自然は壮大なのに、この人も私も日本に生まれているのだなあ。仲間だね」というような、不思議な感覚です。

これはビジネス用語でいう「ラポール」の状態でもあると思います。ラポールとは、相手と自分に共通点を見出すことで、親しみやすさや安心感が高まってコミュニケーションが取りやすくなる、という状態のことです。地元が同じ、大学が同じ、というだけで親近感が湧くあの感覚です。今回でいえば、「同じ人間なのだ」という、非常に広い括りでラポールが感覚的に降りてくる、そういう話になります。

自分が安心感に包まれた状態で接していると、たとえ相手が最初は距離を取っていたとしても、ミラーニューロン(相手と自分の振る舞いや仕草が似てくる、という科学現象)の作用によって、相手も安心感を感じ取り、自然と関係性が良くなっていく、ということなのではと思います。これがサービス提供者と顧客の関係であれば顧客満足にもつながりやすくなりますし、仕事に関係ないつながりであっても、なんだか良好な関係を築きやすくなります。

そして最終的に、アドラー心理学でいう「共同体感覚」──他者を仲間とみなし、自分が誰かの役に立っていると感じる状態──に至りやすくなるのではないか、と感じるのです。こうした感覚こそ、AIが当たり前になった時代において、ビジネスでも人生でも特に大切になってくるのではないかと考えています。

大事なのは、理屈で考えて頭で理解したつもりになるよりも、こうした「感覚」が自分の中に芽生えて静かに存在する、というイメージだということです。

5. 経営者ほど「余白」を持ってよい──師匠から聞いた話

ここまで海外旅行や大自然の経験を、ビジネスの実利的な部分に結びつけてきました。「無理やりロジックでくっつけただけではないか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。特に仕事が好きな方、仕事が生き甲斐だという方は、そもそも旅行に行かないという方も少なくないと思います。

ただ、時間とお金を、目に見える成果のためではなく、自分の中の"余白"を作るために使う。これは結構大事なのではないかと、改めて感じています。

私の経営者の師匠と最近お話しした時にも、「余白は経営において大事だよ」と仰っていました。お金の余白、時間の余白、スタッフ・人員の余白、設備の余白、心の余白──いろいろな余白がないと、経営という不確実な世界では、何かトラブルが起きた時にうまく対応できなくなってしまう。全部をギチギチに最適化しすぎると、何かあった時に追加の出費が出せない、人手がなくて対応できない、ということが起きる、と。

経営における余白を作るには、まず経営者である自分自身が余白を持って、それがあるからこそ会社にも余白が作れる、という順番になります。経営者自身が余白を持って、常にゆるゆるとした意識の状態でいる。そうすることで、お金・時間・人員・設備・心、いろいろなところに余白がある状態を、自分自身に許可できるようになります。

そうなってくると「AIで効率化して時間が空くと、そこにタスクを詰め込む。そして、また常に忙しすぎる状態に戻る」という悪循環に陥らずに済みます。こうしたスタンスが、経営の面でもプラスに作用してくる、と捉えています。

今回は実利的な表現で堅苦しく説明してきましたが、そもそも人生の余白としていろいろな体験をするのは、単純に楽しいことです。様々な体験が幸福感に直結する、というのは幸福研究でもたくさん出てきますし、死ぬ時の後悔として「もっと旅行しておけばよかった」という声がとても多い、と書かれている本もあります。なので、単純にいろいろな経験は良いものだ、ということも改めてお伝えしておきたいです。

6. 「余白の時間」をあらかじめスケジュールに組み込む

あなたは、ビジネスから少し離れた"余白の時間"、最近どれくらい取れているでしょうか?

「あまり取れていない」という方は、まずは強制的にスケジュールに「休暇」の日を何日か先に登録してしまう、というのも一つの手かもしれません。後からそこに、どこかへ行く予定を入れる。その際はパソコンを置いていって、本当に余白に徹してみる。

一見遠回りに見えますが、日常ではなかなか起きない「感覚の変化」が、自分の中でひっそりと起きる時間になるのではないかと思います。

7. まとめ

  • 大自然のスケール感は、本で読むのと実際に体感するのとで情報の質がまったく違う
  • 「自分は自然や宇宙のほんの一部だ」という感覚を持てると、相手とも「同じ人間」という共通点を感じやすくなる
  • 共通点が見えるとラポール(親しみ・安心感)が生まれ、人間関係が深まり、結果として顧客満足や成果にもつながる
  • これによりアドラー心理学でいう「共同体感覚(幸福の指標)」にも至りやすくなる
  • 経営者がお金・時間・人員・設備・心、さまざまな"余白"を持っておくことで、経営にもメリットがある

皆さんが実利を得て、心や時間に余白を持って、幸せに生きられることを祈っております。

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槙 優真

執筆者

槙 優真

ジェネラルコンサルティンググループ株式会社 代表取締役

現役のAI顧問として、中小企業の経営者に月額3万円〜で直接伴走中。AI活用と売れる仕組みの両輪で、「実利」と「余白」を同時に高める伴走支援を提供しています。