「LPをリニューアルしたのに、前より売れなくなりました」
LP(ランディングページ。広告や検索から来た人が最初に見る、商品を売るための1枚のWebページ)の相談で、よく聞く言葉です。今はAIにLPを読ませて、改善案を出させることができます。当社でもそのための仕組みを作り、LP改善案をAIに出させる手順として公開しました。解説動画(約26分)でも、実際の画面を見ながら説明しています。
ただ、その前に決めておくことがあります。先に結論を書きます。売れないLPの原因は、AIで直せる範囲の外にあることが多いです。「何を売っているか」と「読む人が、どのような気持ちでこのページに来たか」。この2つが決まっていないページは、AIに何度改善案を出させても動きにくい。この記事では、ECサイト(自社の商品をインターネット上で販売するサイト)を運営するクライアントAさまの実例をもとに、AIに直させる前に決めることを書きます。
1. デザインを新しくしたら、売れなくなった
Aさまは、自社で仕入れた商品をECサイトで販売している会社です。それまで使っていた販売ページを、Web制作のパートナーと一緒に全面的に作り直しました。写真も文章も新しくなり、見た目は明らかに良くなった。ところが、新しいページに切り替えてから、カートに入る回数がほとんどゼロになりました。
制作パートナーの分析では「明確な離脱ポイント(読んでいる途中でページを閉じてしまう箇所)がない」。特定の場所で急に離れているわけではないのに、最後まで読んでも買われない。原因が分からないまま、写真を差し替え、文章を直し、ボタンの位置を変える。それでも数字は動きませんでした。
私が見てきた範囲でも、この状態は珍しくありません。見た目を整えたのに数字が動かないとき、直す場所を探して細かい修正を重ねてしまう。けれども、原因はページの細部ではなく、もっと手前にあることが多いのです。
2. 離脱ポイントがないのに売れない。何が起きているのか?
転機は、Aさまご自身の一言でした。「あと一歩のところで離脱しているのではなく、そもそも『欲しい』というスイッチが入ってすらいないのではないか?」。
ここで、当社のAIマーケティング研修で最初にお伝えしている考え方を挟みます。商品やサービスが売れるのは、次の3つが揃ったときです。詳しくは中小企業のAIマーケティング|売れる仕組みの作り方と全体像に書きましたが、要点だけ整理します。
| 要素 | 読む人の心の中 | ページで担うもの |
|---|---|---|
| ニーズ(自分ごと化) | 「これは私のための商品だ」 | 誰の、どのような場面の悩みに応えるかが書いてある |
| 感情(心が動く) | 「欲しい」「これを使う自分を想像できる」 | 写真、言葉の順番、使ったあとの光景 |
| 信頼(失敗しなさそう) | 「買っても大丈夫そうだ」 | 実績、お客さまの声、根拠、保証や交換の案内 |
人は感情で「欲しい」と決めてから、買う理由を後から頭で作ります。どれか1つでも欠けると売れませんが、離脱ポイントが見当たらないのに売れないLPには、はっきりした傾向があります。信頼の材料はたいてい揃っているのです。仕様の表、返品や交換の案内、丁寧な商品説明。足りないのは、前の2つでした。
Aさまのページも同じでした。商品の良さを伝える言葉は並んでいる。けれども、読む人が自分の話だと感じる入り口が弱く、感情が動く前に説明が始まっていた。ボタンの色や仕様の表をどれだけ整えても、それらは「欲しい」と思ったあとに効くものです。手前で止まっている人には届きません。
作り手の側から見ると、良いものを作ったのだから伝えたい、となります。買い手の側から見ると、まず自分の悩みや願いが先にあって、商品はその答えの一つにすぎない。この向きの違いが、見た目を整えても売れない状態を作っていました。
3. 欲しくなる理由は1つではない|入り口が4つあった
Aさまが次にやったのは、自分が買う側に回って「なぜこの商品が欲しくなるのか」を書き出すことでした。出てきたのは4つです。
- ひと目で気に入る。見た瞬間に「見たことがない」と心が動く
- 自分に似合う、自分らしいと思える。持っている自分、使っている自分が想像できる
- 使う相手が快適になる。家族や大切な相手のために選ぶ場合の、思いやりからの購入
- 今ある困りごとが解決する。すでに不満や不安があって、代わりを探している
このページに来る人は、4つのどれか、あるいは複数を心のどこかに持っている。そのどれも押さないまま商品の説明を始めても、感情は動かないだろう。Aさまはそう整理しました。
もう一つ大きかったのが、言葉の順番です。それまでのページは、商品の特徴を先に語る書き方でした。これを「〜が心配ではありませんか?」から始めて、特徴はその心配に対する答えとして後から出す。同じ事実でも、順番を入れ替えるだけで、読む人にとって自分の話になります。これが、先ほどの表でいう自分ごと化です。
この4つと順番の気づきは、こちらが教えたものではありません。社長ご本人が買い手の目線に立ち直したときに、自分の言葉で出てきたものです。ここは大事な点かと思います。AIや外部の制作会社に案を出してもらうことはできます。ただ、お客さまがどのような気持ちで探し始めるかを、いちばん知っているのは会社の中の人です。Aさまはこれを紙に書いて制作パートナーに渡し、ページの組み直しが始まりました。
4. 当たり前すぎて書いていなかったこと。書いた途端に動いた
組み直しのあとも、しばらくは安定しませんでした。転機になったのは、ページの最上部、ファーストビュー(ページを開いて最初に画面に映る部分)の変更です。
何を売っているのかが、書いていなかったのです。商品名、産地、素材。作り手にとってはあまりに当たり前なので、写真だけ載せていました。お客さまは、これが何のページなのか分からないまま読み進めていたことになります。
そこで、最上部に「何を売っているか」をはっきり書きました。あわせて、内容の順番も入れ替えています。商品がどのようなものかを先に見せ、その下に悩みへの共感、安心できる理由、品質の説明。会社やブランドの紹介は下のほうにまとめました。この変更を入れた翌日から、注文が入り始めました。
ここから学べることを、3つに絞ります。
4-1 当たり前すぎることは社内の人には見つけにくい
自分たちが毎日扱っている商品ほど、何を売っているかを書き忘れます。第三者に見てもらうか、初めてこのページを開いた人のつもりで最上部だけを読み直す。それだけで見つかることがあります。
4-2 売れなくなったら、売れていた状態に戻す
注文が入り始めたあと、見出しの書体を変えたところ、また止まりました。訪問者数の変動もあり、書体が原因と言い切ることはできません。それでも、原因が分からないときは、売れていた状態にいったん戻す。これは私が長く広告やWebに関わってきた中で身についた改善テクニックです。何かを変えるときは、1つずつ変えて、数字を見てから次に進む。急がば回れです。
4-3 売れないほど、商品の魅力を語ってしまう
その後も注文が止まった時期に、Aさまはある悪循環に気づきました。売れないと、きちんと伝えなければと思い、商品の良さをさらに語ってしまう。文章が押し売りのようになり、読む人の心はかえって動かなくなる。
きっかけは、お客さまから届いた一通の声でした。商品そのものへの評価ではなく、その商品を使い始めてから毎日が少し楽しくなった、という内容でした。お客さまが買っているのは商品ではなく、その先にある光景です。ページの言葉を、商品の説明から、使ったあとの日常へ寄せ直す。この方向転換は、数字が止まったからこそ生まれたものでした。
もう一つ、数字には出にくい変化もありました。無料の特典や会員登録の案内を前面に出したところ、買ってくれる人の層そのものが変わってしまったのです。以前から買ってくれていた層には、特典を使わなければ買えないような迷いを生んだのかもしれません。反応率は変わらなくても、誰が買わなくなったかは数字に出ません。施策を1つ足すたびに、そこも見ておく必要があります。
5. AIに任せるところと社長が決めるところ
ここまで読むと、AIの出番がないように見えるかもしれません。そうではなく、順番の話です。
当社では、LPのURLを貼るとAIが43項目でチェックし、改善案と優先順位を出す仕組みを使っています。作り方はLP改善案をAIに出させる手順と、解説動画(約26分)で公開しました。この仕組みが得意なのは、ページの上にあるものの点検です。信頼の材料が足りているか、ボタンの位置は適切か、文章は読みやすいか、ニーズ・感情・信頼のどこが薄いか。改善案を10個でも20個でも出してくれます。
一方で、AIに任せきりにしないほうがよいことが2つあります。
- 何を売っているかを、一言で言うこと。商品の正式な説明ではなく、初めて見た人に伝わる一言です
- 誰が、どのような気持ちでこのページに来るか。先ほどの4つの入り口のような、買い手の側の事情です
どちらも、AIに分析してもらったり、案を出してもらったりすることはできます。ただ、私の経験では、人の心を動かす言葉は、その会社の中にいる人にしかひねり出せない、というケースがこれまでに何度もありました。AIの案はもっともらしく並びますが、お客さまの顔が浮かんでいる人の一言にはかなわないことが多いのです。この2つが自分の言葉で決まっていない状態でAIに改善案を出させると、それらしい提案は並びますが、どれを採るべきかの判断ができなくなります。
順番はこうなります。
- 社長が「何を売っているか」「誰がどのような気持ちで来るか」を言葉にする
- AIにページを読ませて、改善案を出させる
- 出てきた改善案を、採用・一部反映・採用しない、の3つに仕分ける(この仕分けの考え方は、先ほどの手順の記事に書きました)
1を決めるときにも、AIは使えます。「私の商品を買う人は、どのような気持ちで探し始めると思うか。作業に入る前に、私に3つまで質問してから候補を出して」と頼むと、AIのほうから「どのような人が多いですか」「買い替えですか、初めてですか」と聞いてきます。答えているうちに、自分の中にあった答えが言葉になっていきます。
これは、制作会社に「直してください」と頼む前も同じです。決まっていない状態で外注すると、きれいなページができあがって、売れないままになります。決めてから頼むと、依頼の精度も、上がってきたものを判断する精度も上がります。
当社の顧問サービスでは、コンサルでこの「決める」ところを一緒にやっています。AIの改善案を眺めるところからではなく、何を売っているかを一言にするところから始める。料金は月5万円からで、代表本人が対応します。プランの中身はサービス詳細ページにまとめました。まずは無料の壁打ちで、今のLPを一緒に開くところからでも十分です。
6. まとめ
- 離脱ポイントが見当たらないのに売れないLPは、惜しくて落ちているのではなく、そもそも「欲しい」が立ち上がっていません
- 売れる3要素はニーズ(自分ごと化)・感情(心が動く)・信頼(失敗しなさそう)。売れないLPは、信頼の材料は揃っていて、前の2つが欠けていることが多いです
- 欲しくなる入り口は1つではありません。買い手の側に回って書き出すと、複数の入り口と、言葉の順番が見えてきます
- 最上部に「何を売っているか」が書いてあるか。当たり前すぎて抜けていることが、いちばん大きな原因になり得ます
- AIはページの上にあるものの点検が得意です。何を売っているか、誰がどのような気持ちで来るかは、社長が先に決めます
7. FAQ|売れないLPについてよくある質問
Q1:LPが売れないとき、最初に何を見ればよいですか?
A. 最上部に「何を売っているか」が、初めて見た人に伝わる形で書いてあるかどうかです。商品名、種類、特徴が写真だけに任されていないか確認してみてください。次に、読む人が自分の話だと感じる入り口が、商品説明より前にあるかを見ます。
Q2:AIに改善案を出させれば、それで十分ではないですか?
A. 点検としては十分です。ただ「何を売っているか」「誰がどのような気持ちで来るか」は、AIに案を出させることはできても、最後は会社の中の人の言葉で決めたほうが届きます。この2つを先に決めてからAIに読ませると、出てきた改善案のどれを採るかが判断できるようになります。
Q3:リニューアル前のデザインに戻したほうがよいですか?
A. 原因が分からないときは、売れていた状態にいったん戻すのが基本です。そのうえで、変更を1つずつ入れて数字を見る。全部を一度に変えると、何が効いたのか分からなくなります。
Q4:小さな会社でも、ここまで買い手の気持ちを考える必要がありますか?
A. 会社が小さいほど必要だと思います。広告費で訪問者の数を増やすことが難しいぶん、来てくれた人の中から買ってくれる割合を高めるしかないためです。ページの質は、費用をかけずに上げられる数少ない部分です。
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執筆者
槙 優真
ジェネラルコンサルティンググループ株式会社 代表取締役
現役のAI顧問として、中小企業の経営者に月額5万円〜で直接伴走中。AI活用と売れる仕組みの両輪で、「実利」と「余白」を同時に高める伴走支援を提供しています。



