※この記事は、ポッドキャスト『実利と余白』エピソード#24「AIを"毎回初対面"から、"自分を知り尽くしたアシスタント"に変える」の内容を記事化したものです。
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(テキストで読む方は、このまま読み進めてください)
1. 要点のまとめ
- 多くの人はAIと"毎回初対面"の状態で会話していて、毎回ゼロから説明し直してしまっている
- AIの育て方には大きく3段階ある
- レベル1は、毎回入れ替わる新人
- レベル2は、あなたのことを少しだけ知っている優秀な若手
- レベル3は自分専用に育てたアシスタント・秘書
- まずは自分や自社の前提を1つの文書にまとめて、AIに毎回読み込んでもらう。定期的な更新もポイント
※ポッドキャストでは、より詳しく丁寧にお話ししています。音声での視聴が1番オススメです。
2. AIに、毎回ゼロから自分の説明をしていませんか
皆さんは、AIに何か頼むときに、毎回ゼロから自分の状況を説明していないでしょうか?
「うちの会社はこういう商品を売っていて、こういう客層で、私はこういう考え方をしていて」といった具合です。もしくは、そうした基本情報をまとめたメモファイルを、毎回AIに添付して説明しているかもしれません。
そして話が終わったら、次の日にまたAIを開いて別のチャットを始めるときには、またイチから説明し直す。おそらく一番多いのは、自分のことをまとめたファイルも特に用意しておらず、毎回ゼロから説明している状態です。つまり"毎回初めまして"に近い状態でAIとやり取りしている方が、最も多いのではないでしょうか?
先に結論をお伝えすると、AIは"毎回初対面"ではなく、時間をかけて"育てる"ものです。そして育てる段階は、大きく3つに分かれます。
3. 新入社員に、初日から完璧を求めていないでしょうか
AIとやり取りをして、その答えを見て「やっぱりAIってまだ使えないな」「この使い方にはちょっと微妙だな」と感じたことはないでしょうか?おそらく一度はあるはずです。
これはよく考えると、不思議な話です。自分のことも自社のことも何も伝えていない状態で、AIに完璧なアウトプットを求めている。これは「初めまして、○○と申します」と挨拶したばかりの新入社員に、1日目からうちの会社のやり方に沿った完璧なアウトプットを求めているのと、同じことをやってしまっている状態です。
AIは非常に賢く、人間で言えば天才や秀才と呼ばれるくらいの頭の良さには、もう到達しています。ただ、その頭の良いAIも、あなたの会社のことは知りません。あなた自身のことも知りません。だから、あなたや会社が求める微妙なトンマナ(文章や表現の調子)、こだわり、価値観を知らないままアウトプットするので「なんだかズレているな」ということが起きてしまうのです。
いくら優秀な新入社員でも、自社のやり方を知らなければ、さすがにそこまで完璧にはならない。そう考えると、イメージがつくのではないでしょうか?
ここで「そもそもAIって、勝手にこちらのことを覚えてくれると聞いたことがあるけれど、違うのか」という疑問を持たれた方もいるかもしれません。確かにその通りで、AIには記憶する機能がどんどん備わってきています。メモリ機能と呼ばれるものです。そのあたりも含めて、ここから3段階に分けて解説していきます。
4. AIの育て方には、大きく3段階ある
この話をするときは、AIを「機械や頭の良いツールというイメージ」よりも「自分のアシスタントや秘書のようなイメージ」で捉えていただくと、分かりやすくなるかもしれません。
4-1 レベル1:毎回入れ替わる新人さん
毎朝「うちは○○の会社で、こういう商品を△△の客層に売っていて」と説明し直してから、ようやく「こういう企画を作って」「こういう文章を書いて」と仕事をお願いする。もしくは、このような前提を説明せず、いきなりAIに何かを依頼する。
多くの方は、こんな使い方ではないでしょうか?
4-2 レベル2:自分のことをある程度知っている優秀な若手社員
ChatGPT・Gemini・Claudeには「メモリ機能」や「ナレッジ」と呼ばれる機能があります。メモリ機能とは記憶してくれる機能のこと。ナレッジは日本語に訳すと知識で、自分のことを書いたファイルや参考資料を添付して、知識として持っておいてもらう機能のことです。名前は覚えなくても大丈夫で、ふんわり「そういうものがあるのだな」くらいで十分です。
これらをなんとなく使えている状態がレベル2です。ずっとAIを使っていると、AIが自分のことをなんとなく記憶してくれていて「仕事はざっくりAIのコンサルだな」「名前は槙というのだな」と分かっている。あるいは文章を書いてもらうときに、昔書いた参考の文章を都度チャット画面に添付してから指示する。そんな使い方です。
業種やスタンスを少しずつ覚えてくれたり、その都度参考資料として見てくれたりするので、頼みごとをしたときも、良いアウトプットが出てきやすくなります。
4-3 レベル3:自分専用のアシスタント・秘書として育っている状態
メモリ機能やナレッジを、本気で使い倒す段階です。あらかじめ自分の基本情報、価値観、仕事で大切にしていること、家庭で大切にしていることなどを"自分のトリセツ(取扱説明書)"のようにファイルにまとめておく。それとは別に、会社の情報や仕事のスタンスもまとめておく。そして毎回それをAIに読み込んでもらってから回答してもらう、という仕組みにしておきます。毎回自分で添付するのは面倒なので、最初からAIがそれを読み込んで回答してくれるようにしておくのがポイントです。
こうすると、自分のことも自社のこともだいぶ知り尽くしてくれている状態になるので、いわば自分専用の、長年雇ってきたベテラン秘書・ベテランアシスタントのようになります。AIに少し何かを聞いただけでも「いつもの槙さんの価値観に照らし合わせると」「槙さんの仕事のスタンス的にこういうものは好まないと思うので、却下しておきました」といった回答が返ってくるようになります。
5. なぜ、AIの回答は放っておくと当たり障りがなくなるのか
なぜここまで変わるのでしょうか?
AIは世界中の情報を学んでいるので、質の高いノウハウも質の低いノウハウも、どちらも学んでいます。その結果、世界中から学んだ内容が中和されて、真ん中に落ち着くようなイメージです。
だから放っておくと、割と当たり障りのない回答になりがちで、あなた自身の性格や個性、こだわりとはズレた回答になることが多くなります。だからこそ、自分の基本的な情報や価値観、仕事のスタイルを、できるだけ細かくAIに渡しておくことが効いてくるのです。
6. 「自分の情報をAIに渡して、漏れないのか」という疑問について
ここで「自分のノウハウをAIに渡したら、AIが学習して世界中にそのノウハウが広まってしまうのではないか」と心配される方もいます。
無料版だと、学習除外の設定ができない場合もあります。その点、月20ドル前後(月額3,000円ほど)以上のプランになると「自分がAIに渡したことは、他の人に対して出すような形で学習しないでほしい」という設定が、だいたいどのツールにも付いています。データ漏洩・情報漏洩を防ぐ設定が、ボタン一つでオンオフできるのです。業務で使うのであれば、有料プランの方がオススメです。
もちろん、OpenAIやGoogle、Anthropicといった提供元自体がハッキングされてデータを流出させてしまうような大事故が起これば、話は別です。ただ、そこは我々にコントロールしようがないところなので、インターネットを使う以上は仕方ない部分だと捉えています。
私の場合は、年齢・身長体重・健康診断の数値といった基本情報から、事業内容や会社のWebサイトといった仕事の情報、さらに自分自身が仕事において過去に学んだことまで、すべて箇条書きでまとめてあります。仕事のスタンスや価値観も箇条書き。家庭やプライベートで大切にしていること、やらないと決めていることも、同じように項目を立ててまとめています。
私はWordではなくGoogleドキュメントにまとめていて、定期的に見直し、日々学ぶことがあったらメモを追加しています。その"私のトリセツ(取扱説明書)"に書き足していくほど、AIが私のことを知っているベテラン秘書・アシスタントのようになってくれます。
7. その上には、レベル4・レベル5の世界もある
ここからは少しマニアックな話になるので、興味のない方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。
レベル4と呼べそうなのは、記憶の範囲をコントロールする使い方です。「このときはこの記憶を使ってほしい」「こちらの仕事ではこの記憶を使ってほしい」というように、記憶を層のように切り替えていく。Claude Codeなど、少し高度なツールが絡んでくるので、一般的なレベルからは少し上になってきます。
さらに上のレベル5になると、私がお世話になっている経営者の方が、特許を申請して独自のAI記憶システムを開発されています。過去1年間の記憶をweekly、monthlyといった形で時系列に沿って覚えていて、しかもその時系列ごとに記憶の粒度が変わるようになっているものです。
「意味が分からない」と思われた方も多いでしょう。私も最初は戸惑いましたが、詳しく聞いてよく分かりました。これは、人間の記憶の持ち方と一緒なのです。
人間は最近のことはよく覚えていて、昔のことは忘れています。昨日の夜ご飯はおそらく覚えていても、4ヶ月前の夜ご飯は忘れている。でも昔のことだとしても「あのとき海外旅行に行った」といった強烈なエピソードは覚えている。つまり、時系列とエピソードの大きさという2つの軸で、記憶の強さが変わっているはずだ。その仕組みをAIに実装しようという特許なのです。
これをやると、1年分の自分の会話をAIが覚えてくれるので、記憶力が飛躍的に良くなります。私も今、テスト的に使わせていただいているところです。
「AIを育てる」という言葉は、こうして解像度を上げていくと、どんどん深くなっていきます。ただ、少なくとも先ほどのレベル3まで使えるようになれば、だいぶ便利になります。
8. 今日の持ち帰りは、"自分のトリセツ(取扱説明書)"を1つにまとめること
ここからは、今日持ち帰っていただきたいことを整理します。
拍子抜けするくらい地味なことです。誰でもできる簡単なことで、今日からすぐできることでもあります。
自分のことを、WordでもメモでもGoogleドキュメントでも何でも良いので、とにかく1つのファイルにまとめておく。これだけです。
自分の情報、自社の情報、自分のノウハウ。身長体重や健康情報を含めた基本的な情報。仕事における価値観、家庭やプライベートにおける価値観。こういったことを箇条書きでまとめておくことをオススメします。
こうしておくと、AIに毎回それを読み込んでもらう仕組みが作れます。すると、いちいち自分のことを説明しなくても、たとえば「このメールの返事を書いて」と言うだけで、私の文体、メールで気をつけていること、絵文字の使い方まで踏襲した回答が一瞬で返ってきます。あとは最終確認をして送るだけ。手間が本当になくなります。経営の壁打ちも同じです。すぐに、しかも自分にぴったりの回答が出てきやすくなります。
マイGPTやGem、Claude Projects(あらかじめ前提情報を持たせておける機能)を使える方は、あらかじめ裏側に基本情報ファイルを添付しておけば、毎回アップロードする必要がないので非常に楽です。そうした機能を使わない方でも、1回ずつ少し面倒ですが、まとめたメモファイルを手動で毎回添付する形にしておくと便利です。スマホからだと添付しにくいので、その場合は指示の文章の下に「私について知っておいてほしいことをまとめました。以下の通りです」といった形で、毎回コピーして貼り付けておくとよいと思います。
シンプルなのですが、これが非常に効きます。1回書けば毎回の説明コストが下がりますし、そもそもアウトプットの精度が自分にぴったりのものになってくるので、すぐ使えるものが出てきます。
私自身も、自分では気づいていなかったことや、過去に学んだのに忘れていたことについて「確かにその視点を踏まえるとそうなる」と思わされることが結構あります。人間は忘れる生き物です。でもAIは基本的に忘れません。人間よりは少なくとも記憶力が良いので、このメモリ機能はぜひ活用していただけるとよいと思います。
9. まとめ
- 多くの人はAIと"毎回初対面"の状態で会話していて、毎回ゼロから説明し直してしまっている
- AIの育て方には大きく3段階ある
- レベル1は、毎回入れ替わる新人
- レベル2は、あなたのことを少しだけ知っている優秀な若手
- レベル3は自分専用に育てたアシスタント・秘書
- まずは自分や自社の前提を1つの文書にまとめて、AIに毎回読み込んでもらう。定期的な更新もポイント
皆さんが今使っているAIは、毎回新人のような状態でしょうか?それとも、自分のことを知ってくれているアシスタント・秘書になっているでしょうか?
もしそうなっていないという方は、ぜひ今日お伝えしたことを試してみてください。
皆さんが実利を得て、心や時間に余白を持って、幸せに生きられることを祈っております。
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執筆者
槙 優真
ジェネラルコンサルティンググループ株式会社 代表取締役
現役のAI顧問として、中小企業の経営者に月額5万円〜で直接伴走中。AI活用と売れる仕組みの両輪で、「実利」と「余白」を同時に高める伴走支援を提供しています。
